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手作業で仕上げられていない時計は悪い時計なのか?

部分的な手仕上げ、あるいはムーブメントに手仕上げがないからといって、必ずしも時計の仕上げが悪いというわけではなく、ましてや悪い時計というわけでもないことは指摘しておきたい。自動化された、あるいは部分的に自動化された仕上げであっても、優れた仕上げであることに変わりはない。プライムリブのオージュを注文したのに、ベジネーズが添えられたくるみ豆腐のローフが出てきた、というようなことはないのだ。約200年前にフライス盤が発明されて以来、時計製造の歴史は機械的精度の向上を追求してきた(もともとは銃器産業のために発明されたもので、部品を交換できる銃を作るためのものだった)。

ロレックスのレ・アカシアをベン・クライマーが2015年に訪れたときの様子『ロレックス 全4工場の舞台裏に足を踏み入れる』。年間100万本の時計を極めて厳しい品質管理のもと、クロノメーターを超える精度で生産する方法。

フィリップ・デュフォーの作業台。年に数本の時計を最高レベルの手仕上げで生産する方法だ。

つまり問題は機械ではない。機械がなければ、ロレックスは日差±2秒以内の高精度をを備えた時計を年間100万本も作ることはできない。ムーブメント全体に施される実際の手仕上げは非常に特殊で、非常に時間のかかる専門的な技術であり、今日では伝統的な技術の保存を目的としている。そのようなことに関心があれば、それは非常に大きな付加価値となるが、それによって時計の精度や信頼性、耐久性が向上するわけではないのだ。


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